[Japanese] Hayashibara 3.0 [VERSION TWO]

Obtained from pastebin.com (5/4/13)

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林原めぐみ (アヤナミレイ(仮称)役)
レイちゃんには、疑問が無駄……むしろ邪魔なんですね。いらないんです。だから私も、ただ事実だけを受け止めて、落とし込んで肉声にしています。

——まったく新たな物語となった『Q』は、いかがでしたか。

林原  「『破』で破れきったんだな―」というのが第一印象ですね(笑)。知っているシーンや懐かしいシーンが一個もないやと。過去にオマージュされているシーンやリンクしているところって、いっさいないですよね。

——今回の新しい物語や設定については、どう対応していかれたのでしょうか。

林原  正直言って、自分が出てないパートは知らないんです。出てるところも、画は完成してはいないので、監督に「どういうことですか?」と聞きながらという、特殊な録り方をしています。劇場版の場合って、普通は最初から最後までストーリーを把握した上で、自分のポジショニングに落とし込んで、そこにだけ集中して演るものなんですが、これはホントに分からない。やっぱり『エヴァ』だから許される録り方だとは思います。ただ、私としてはこれだけ長く演ってきているので、他でどんなことが起きていても、レイちゃんはレイちゃんでしかない。彼女のことだけ考えて演ったので、分からないことがつらいというわけではないんです。

——とは言え、長く出ておられる方にも驚きがあったのでは。

林原  確かにファーストシーンを見たときにはね、「これってシンジくんの夢オチになるんじゃないか」って思いましたよ(笑)。とある会で庵野さんが「今度は戦艦に乗るんだ」と言ってたんですが、てっきり冗談だと思ってたんで、「ああ、ホントだったんだ」って。その印象と「どうも本当に時が経っているらしいぞ」というのが分かって、「どっこへ行くのかな―、このエヴァンゲリオンは?」という衝撃はありました。そこはおそらく初めてご覧になった観客の方々と同じだと思います。

——そんな状況をふまえて、どのように収録を進められていったのでしょうか。

林原  ホントに小さなセリフを何テイクも録るのはいつもどおりですね。庵野さんの脳の中には、気に入る音があるみたいなんです。単なる音じゃなく、感情の乗っかり方含めてですが。「はい」という返事ひとつにしても、込めすぎたとか外側にいすぎたとか、その辺のサジ加減がね。今回、レイと言ってもレイじゃないので、その辺で若干の調整はありましたが、淡々と録ってましたね。それでレイが増殖するシーンが気になったので、「これって何でしょうか?」と聞いたら庵野さんから明確な回答がありまして、ここでその内容は言えませんが、鶴巻監督たちスタッフが一様にオタオタし始めたんです。後から「ありがとうございます。アフレコ現場でいろんなことが明らかになるものですから」とお礼まで言われたので、「どういうものづくりかいな?」って思ったのが一番印象的でした(笑)。

——すべてを明らかにしないまま進めるのも、『エヴァ』の特徴のようですね。

林原  結局、すべては庵野さんの脳の中で起きていることなんですかね。それを伝え損ねているのか、あるいは急にひらめいちゃうのか。追っかけるのか、いつか噴射するのを待っているのか、すべて信頼のもとなんでしょうけど、もう、エヴァンゲリオンのスタジオは、ただただエヴァンゲリオンのスタジオであるというだけであって、この作り方はどこの誰も継承することも模倣することもできない。そんな空間になっています。新キャラの人たちも、きっと大変だったでしょうね。私だってすごく何度も録り直しますし、「すごくいいから、もう一回」と言われて、「あっ、出た!」という感じで、別に「監督は私に何を要求しているのかしら」と頭かかえて膝かかえたりすることはないんですよ。ただ「あっ、違うんだな」と。どっちのニュアンスが欲しいのかな、右かな左かな、斜めかな、という感じです。

——庵野さんのストライクゾーンが狭いということですか?

林原  いえ、きっと、ドはまりじゃないからなんですよ。ちょっとだけズレてる。監督はど真ん中ストレートか、逆に手を伸ばしても拾うこともできない想定外のボールじゃないと、オッケイにならない。少なくともレイについてはそうですね。特に彼女は精神性がどこまで声に乗っているか、ニュアンス重視の子ですから。嬉しさがあっても出過ぎちゃダメだし、でも嬉しいという気持ちはある。それは声には乗らなくて表情だけで見せる方がいいという場合もあるし。そんな感情の波みたいなものが、ホンの1ミリずれても彼女の性格を左右してしまうので、なおさらだと思いますね。

 

別レイを演じる上でもいつもと変わらない

——それほどシビアなものだとして、今回の別レイ(台本上での仮表記)はどう演じられましたか?

林原  とても申し訳ない言い方になるんですが、私は「別レイ」に相当する仕事をやりすぎてしまったんですね。関連商品では、本来のレイが絶対に言わないであろうセリフも言うわけで、それがすでに「別レイ」なんです。庵野監督の脳みその中からプリントアウトされたレイだけが唯一のレイだと私の中では思っているので、だから監督の指示にしたがって動けばいいという感じです。ドラマチック的なものや衝撃があったとしても、「私を見て衝撃を受けたことが何?」っていう感じなんですね。私は私として存在しろと言われているから、ここに立っている。それがすべてなんです。

——いまちょっと感動してます。その発想自体が、綾波レイそのものなので。

林原  私はレイとしてしかスタジオに行ってませんから。前に『破』ではおみそ汁飲んで「おいしい」って言ったのが話題になりましたが、別に「おいしい」と思ったから、そう言っただけですけど……って。たとえ方が強引ですけど、普通の人が気分を変えたくて髪の毛を切ったとして、「何があったの?」「失恋?」とかあれこれって騒がれても、本当に「別に。暑くなってきたから切っただけ」ってことあるでしょ?それくらい彼女の中で起きていることしか、私は追っていないんです。それに対してシンジくんがどう思ったかとか、どう描かれているかとかは、自分が演じたことを一回すべて忘れて、劇場で映像を見て、初めて味わう感覚なんです。今はまだ完成していないので、そこに至っていませんね。

——今回、別レイのプラグスーツは黒なんですが、それはどうでしょうか。

林原  あっ、そうなんだ。ぜんぜん知らないです。黒なの?あら、すてきね。私、黒好きだから。白も好きだけど。でも「え?黒ですか」としか思わないんです。「着ろと言われれば、黒着ますよ」ってぐらいのことですね、私にとっては。やっぱりその辺なんですよ。そうした情報が、私にはいらないんです。他の作品だったら「なぜ黒なんですか?」という疑問や、それを私はどう受け止めて、どうリアクションすればいいんですか、ってことになるんですけど。彼女はプラグスーツが黒だってことに何の疑問も抱いていないだろうし、もしも「前の人は白だったのね」というセリフが仮にあったとしても、事実だけ。「なんで私、白じゃないのかしら」っていう疑問はおそらくいらない。そこには別に何にもない。もしあれば監督から指示があると。

——それも綾波レイとゲンドウの関係性を連想させるので、すごいです。

林原  そうかな……。やっぱり私もレイちゃんと付き合い長いですからね。感覚を共有しないと、彼女にはなれないので、いちいちいろんな感情に振り回されていてはね……。すでにいろんなインタビューで言ってるんですが、TVシリーズで自爆したところで、私の中のレイは一回終わってしまったんです。それ以外は全部「別レイ」なんですよね。ただ、今度の『序』だけは少し前のレイちゃんに再会できた気がしました。それまでは何度同じセリフをしゃべっても、すべて別レイで。でも、久しぶりに会えたと思ったのに、『破』では使徒に取りこまれて、「ああ、今回のレイはこんな成長の仕方をするのか……」と思ったら、案の定、閉じ込められて救い出されず、「やっぱり次が出てきたか……」と。そこは淡々としてます。レイちゃんには、疑問が無駄……むしろ邪魔なんですね。いらないんです。だから私も、ただ事実だけを受け止めて、落とし込んで肉声にしています。

 

現実に起きていることを取りこんでいく現場

——とはいえ次回作もまだありますし、今後に期待することはありますか?

林原  なんか……ちょっと面白くなっちゃったな(笑)。TV録ってたときも毎週録ってたわけじゃないんです。監督が「ライブみたいな感じでやりたい。そのときの瞬間瞬間の気持ちだけでやりたい」って言ってて、今回はそれに近い感覚がありますね。監督がいま描きたいエヴァンゲリオンの着地点って、一応は決めてあるにしても、それが変わっちゃうこともあるでしょうしね。時代の中で。

——それはありえますね。日々事件も起きるし、時間経過も積み重なりますし。

林原  劇中では14年経ってるんですよね。前のアフレコ中には役者が「声が歳とった」と、失礼なことも言われた!なんてエピソードも聞きましたけど(笑)。私は過去のエヴァを見返して臨んだってこともあるし、レイちゃんは基本歳をとらないだろうから、私の中の時代感をわーっと巻き戻して挑みましたけど。『序』『破』では、他の役者さんは、あえて、年齢をとったなりの「今」の芝居をしようとしたら、前の芝居を要求されて戸惑った、なんて話も漏れ聞こえてきて……。それで14年経った設定になったのかなって、勝手に思っちゃったのね。まあ、本当は前々から考えていたことかもしれないんだけど……、わかんないや。あえて、探りもしないし。この変化の感覚が、TVのときに非常に酷以していて、何か監督がインスパイアされたことによって、先が変わっていく感じ。あくまであたしの中で、ですけどね。何でもいいんですよ。描きたいと思ったことを大人の事情の中でも、しっかり描ききれていればね。エヴァンゲリオンスタッフの方たちが。この先、どういう展開にされても、驚かないですね。ぜひ、お客さんといっしょにビックリしたいと思います。CGを含め現在の技術によって、エヴァンゲリオンの世界の独自性がより拡がりましたしね。使徒とか超セクシーだし(笑)、常に新しさがスタッフの中にあるってことが、すごいなって思います。

——林原さんは、長く続いてきた『エヴァ』という作品をどう見られてますか。

林原  やっぱり作品として世に公開されたとたん、過去のものになっていくものじゃないですか。前のときも「エヴァみたいな作品」とか「綾波レイみたいなキャラ」とか、「エヴァ風なもの」をいっぱい生み出したわけですよね。今回も結局、『エヴァ』が投じた『Q』としてのクエスチョンって、「エヴァはエヴァを超えていかなければいけない」ってことじゃないでしょうか。何しろ「エヴァ風」「綾波風」なものの元ですからね。

——「エヴァによってエヴァを超える」というのは、庵野総監督の大きな課題だと、『序』のときにうかがいました。

林原  あっ、そうなんですか。じゃあ、いいこと言った私(笑)。かと言って、そんなに「新しいもの」「新しいもの」って言われても、わいて出てくるものでもないですからね。それをふまえて、きちんとエンターテインメントにする作業を続けているのは、すごいなって思います。ですから、プラグスーツが何色になろうとも、参加できてて幸せです。

——綾波以外にも林原さんは碇ユイも初号機も演じられて、まさに物語の中心にいるわけです。でも、その中心にある種の空虚さが垣間見える感じに、今日はぐっときました。

林原  削って削って削ってレイちゃんにたどりついてますからね。いらないものはいらないんです。感情の起伏、興味や関心についても。伝えたいこと、いま感じていること、しなければいけないこと、碓実に見えていること。それ以外は何もいらない。レイにも私にも……。そんな感じです。
はやしばら・めぐみ 東京都出身。ウッドパークオフィス所属。代表作は『らんま1/2』(らんま役)、『スレイヤーズ』(リナ=インバース役)、『名探偵コナン』(灰原哀役)など。キングレコード所属の歌手としても活躍中。

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