[Japanese] 2012? – Ishida 3.0

Obtained from pastebin.com (5/4/13)

———————————————————————————

石田彰 (渚カヲル役)
実は今回の『Q』への前振りというか違和感は、すでに『序』と『破』に仕込まれていたものなんです。「同じに見えるでしょう?でも違うんだよ」っていうことですね。

——カヲルは『序』『破』とも、「前のエヴァとは違う」ことを示すポジションにいました。石田さんとしてはどんな解釈で演じられてきたのでしょうか。

石田  実は『序』の収録をする時、『新劇場版』における渚カヲルはどういう人で、碇シンジってどういう人なのか、庵野監督(※キャストの発言中、「監督」「庵野監督」は庵野総監督の意)からレクチャーをしていただきました。その納得のもと、『序』と『破』の状況やセリフについても、僕なりの理解に基づいて演ってきてます。『Q』もその流れをふまえての演技でした。そうは言っても、『序』と『破』ではそれが具体的に現れるシーンは多くはなかったわけです。なので『Q』は「結局こういうことなんだ」って、ものすごくはっきり分かる……。そういうお話でしたね。

——その核心にあたる「謎」については、みなさんの関心も高いと思います。

石田  腫れ物に触るような言い方をさせていただいてますが、最初に庵野さんから聞いた「設定」については、お伝えしない方がいいと思っています。そもそも『序』『破』の段階で、僕自身が周りから「あれってエヴァのTVと劇場版をもう一度焼き直して映画にしたの?」みたいなことを何度も聞かれたので、僕としては「続きを観て判断してください」としか言いようがなく、やはり僕の口からはとても言えないことなんです。さすがに『Q』を観れば、「焼き直し」という感想をもつ人はいなくなるだろうと思うんですが……。

——カヲルだけが何かを知っているように動いてますが、その状況は役者陣の中でも同じに見えて面白いです。多くの方が『Q』の内容に驚かれたそうですし。

石田  他の出演者の方が今回ビックリしてたってことは、最初に監督から明かされた話は僕だけにされてて、役のポジションと役者が知るべき情報を、きっちりと合わせてくださったということでしょう。逆に僕は今のお話を聞いて「おおっ!みんな知らなかったのか?」と思いました。これまで説明を求めてきた人に対しては言葉を濁しつつも、「焼き直しみたいに思われるのは、非常にもったいないな」という想いと「やーい、引っかかった引っかかった」という想いの両方があって、それを半ば楽しんでる部分もあり、ちょっと残念だなと感じているところもあったんです。

——そんな複雑な想いをされてきた石田さんにとって、待望だったのでは。

石田  「待望の」というよりは、「さあ大変だ!」って感じです。『序』では皆さんご存知の通り出番が少ししかなかったのですが、収録後に庵野監督から「次はいっぱいしゃべるからね」って言われていたんです。ところがフタを開けてみたら、『破』もそんなに出番は多くなかったですよね(笑)。なので今回の『Q』の収録のときは、「いよいよなんだ」と身が引きしまった感じです。案の定、カヲルがあれだけしゃべり始めると、今まで予想していなかったところに話が行ってしまうわけです。もちろんTVシリーズを含めた『エヴァ』の規定路線じゃないところに行くことは予想はしていました。たとえ違う話になったとしても、カヲルが碇シンジに抱いている気分的なもの……そこは変わらない。前回と違う世界だと自分が分かった上で、今回の碇シンジにどういう風にアプローチするのか、みんなが納得するかたちで表現しなければいけないわけです。これはけっこうハードルが高いぞと。なまじ最初から教えられていた分、どうしようっていう想いもありました。違うサイクルとはいえ過去の積み重ねの中で、渚カヲルはこうあるべきとか、『エヴァ』そのものがこうであってほしいという、カチッと決まったストライクゾーンがありますからね。それは外せないです。

イメージのすり合わせでテイクを重ねた収録

——実際の収録に臨まれたときは、いかがでしたか。

石田  実時間としてはもう十何年も経ってしまった石田彰ですし、最初に演ってからシリーズとは離れたゲームなども経てきて、自分の中で次第に消化され、よく言えば熟成してきてます。でも、もし最初のイメージからは変わってしまったとすれば、やはりそうではいけない。今回、『エヴァ』の現時点での集大成としたいというスタッフの想いも感じましたし、そうしたさまざまな要求に応えるのが、すごく大変ではありました。

——庵野総監督とは、どんなやりとりをされたのでしょうか?

石田  シーンを実際に成立させるために、渚カヲルっていうキャラクターはそれで正解なのか、イメージとしてこれでいいのかって固める作業は、テイクを重ねて何度となくやりました。日を改めて丸ごとりテイクを録るという作業もありましたし。ですから、非常に気を遣って演じた作品になりましたね。石田彰が渚カヲルというキャラクターに対して自分の中でもっているイメージと、みなさんが最初にTVを通して受けたイメージと、そのすりあわせをもう一度やってみましょう……。そんな収録だったと思います。となると基本はTVの第弐拾四話ということになりますが、僕の中ではそれを再現したわけでもないんです。改めてTVシリーズを見直してみると、当時なりのベストでみなさんに観ていただいたものではあるんですが、それを正解としてコピーしようとしたわけでもない。実際、『Q』の収録を終えた後での僕の結論としては、当時そのものでもなく、2012年の現段階で僕が感じている「渚カヲル像」そのままでもない。みんながキャラクターに対するイメージをずっと膨らませてきたものがあって、それぞれ「こうであって欲しい」という願いを、もう一度整理して狙ったものになっていると思います。

——なるほど。シンジとは『新劇場版』初になるカラミの芝居がありました。

石田  直接シンジと会話をできたことは、僕にとってものすごく大きいことでした。これまでは、一方的に『新劇場版』の今を生きている碇シンジに対する想いを、ちょっとずつちょっとずつ吐露してきた。それが、ようやく本人と話をすることができた……。これはカヲルにとってはとっても待ち望んでいたことだろうし……。うん……。やはりその直接対面ってことですよね。周辺かち人知れずサポートするよりも、実際に会って話していっしょに時を過ごす。そうしたコミュニケーションをとるということは、『エヴァンゲリオン』という作品にとって、ものすごく重要なことなんだなと改めて思いました。そう考えてみると、周囲から疎外されてしまったシンジが、誰も頼れる人がいなくなったところで渚カヲルと会えること。そこで話が出来たということは非常に大きな意味がある。これまでの2本の映画は、そういう状況をつくるための壮大な前振りだったとも感じます。

——そうは言いつつ、カヲルにはやはり悲劇が待っているわけですが。

石田  過去のTVシリーズを彷彿とさせるシーンやニュアンスの再登場は、それこそ今回の『新劇場版』の『序』と『破』を通して使われてきた手法ですよね。何度やっても同じになってしまう。前のサイクルとは違うはずなのに、やはり同じ轍を踏んでしまう。どうしようもない運命的なものがある。それでも線路のポイントを違うところに切り替えてみたい。大きなものの流れに対して、なんとかあがいてみたいという、そんな想いがあって、生き残るべきシンジの身代わりになっていくんでしょうね。

——いつも超然としたカヲルですが、今回は動揺する演技があって新鮮でした。

石田  渚カヲルはかなりのことを把握していて、何でも知ってて何でも自由に動かせる。ややもするとそう見えますよね。自分の存在理由が分かった上で動いてはいるけど、すべてを仕切っているわけではないってことでしょう。ゲンドウやゼーレたちが世界を把握して自分の思うとおり動かそうと丁々発止しているその上にいて、俯瞰でものを観ているように思われがちなカヲルなんですが、その彼でさえもコントロールする立場の存在ではなかったってことでしょうね。

納得ずくでやろうとピンポイントをねらう現場

——カヲルとして存分に演じられたんだなと、お話をうかがってそんな印象を受けました。

石田  庵野監督に限らずスタッフの方々みんなが、今回のシリーズを『エヴァ』というタイトルの中でも究極のものにしようと努力している。収録も、ものすごくピンポイントをねらって表現しようとしている。そのために「ああでもない、こうでもない」と、みんなでやっている雰囲気を常に感じてます。実際にマイクの前に立つと、僕と緒方さんの二人しかブースにいないわけですが、セリフやシーンの解釈に、他の作品ではありえないくらいの時間を割くんです。「納得ずくでやろう」って空気が常にあるので、作業自体はすごく大変ではあるんですが、「お前、やれよ!」って投げられてるわけではなく、みんなでつくればいいんだって感じです。単なるプレッシャーだけではなく、作品をいっしょにつくりあげる、共同でやっている安心感がありましたね。今回は同じシーンに登場する緒方さんといっしょうに演れたことが、僕としてはすごく嬉しかったです。これまでは基本は僕一人で録ってましたから。

——そのシンジとEVAにタンデムで乗るというのは、カヲルにとっても初体験ですよね。ある種の「ラブシーン」的に解釈される方もいると思います。

石田  僕にはその解釈はできませんよ(笑)。監督の言葉を待っていただくか、真剣に理解しようとずっと追いかけてきたディープなファンの方にお任せしたいと思います。ただ、少なくとも別々の機体で歩んでいるのとは違い、同じ目的に向かっていっしょに歩いていく。そんなつながりの濃さみたいなものは感じました。

——他に印象的だったことは?

石田  ビジュアルで一番ビックリしたのは、月があんなことになってるシーンですね。『Q』は頭からものすごく整った世界が描かれてますから、ショックがありました。きちんとした技術に支えられた環境の中でみんな生活していると見えてたのに、シンジの見たいものを見せようと外に出たら、霧で周囲がよく見えない中から「どーん!」と。見知っていた世界のすべてだと思ってたものと、「君が観たいという現実」との落差が端的に描かれていて、かなりの衝撃でした。

——では、最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

石田  『序』『破』と重ねてきた『新劇場版』のストーリー展開を完全には読みかねていた方にとって、今回の「Q」はまさしく「急展開」だったと思います。でも、実は今回の『Q』への前振りというか違和感は、すでに『序』と『破』に仕込まれていたんです。「同じに見えるでしょう?でも違うんだよ」っていうことですね。『Q』をご覧になったお客さんは、「これってどういうことなんだ?」って碓かめるために、きっと何度も劇場に足を運ぶことでしょう。でも「あらかじめ仕込まれていたもの」と聞けば、その前の『序』と『破』に戻ってもう一回観てみたくなるでしょ?注意深く観ていただけたら、「あっ、ここにネタ仕込んでる」「ここにも」というのが、必ず見つかりますから。最初から見直してみると、『Q』につながるストーリーって、ものすごく納得していただけると思いますし、今回まさに急展開になるお話の後は、「いったいどこに行くんだろう」って、さらに興味深くなるはずです。これだけ既定路線から「どん!」と外れたところに持っていったお話ですから、すでに前のTVシリーズの最後や前の劇場版のエンディングみたいな、ああいう収まり方であるはずはない。僕はそう思っています。そうなると、「いったいどうするの?」「じゃあ、何なんだよ」という風に、次に対する興味がものすごくわいてきますし、皆さんもきっとそうでしょう。ぜひ完結編も楽しみにしていただきたいと思います。
いしだ・あきら 愛知県出身。ピアレスガーベラ所属。代表作は「PSYCHO-PASS サイコパス」(縢秀星役)、「機動戦土ガンダムSEED/SEED DESTINY」(アスラン・ザラ役)、『銀魂』(桂小太郎役)など。