[Japanese] 2010 – 2.0 Complete Records Collection – Anno

Obtained from forum.evageeks.org (5/4/13)

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大きく変えたきっかけは『序』次回予告の反響

—『破』に関してお聞きしていきたいと思います。『破』と『序』と並行でシナリオや設定などプリプロダクションを開発されてましたよね。それは連続して制作、公開する予定だったからだと思います。その方針が大きく変わり、『序』の公開時にあったシナリオを改訂していくことになった経緯からおうかがいしたいです。変わった時期としては、やはり『序』の公開された直後でしょうか。

庵野 そうですね。それからですね、大きく変更したのは。

—いろんな取材から推察すると、『序』の現場が佳境に入る前にシナリオができていたようですね。樋口(真嗣)さんもその時点のバージョンのシナリオでコンテを描かれたとおっしゃってます。

庵野 確かにホン(脚本)は『序』の作業と並行して二〇〇七年の三月まで書いていますね。脚本第11稿というのが決定稿になっています。絵コンテもそれ以前の脚本から『序』と並行して作業を進めていて、分量的には全体の三分の二ぐらいは、すでに第一稿が上がっていたと思います。『序』が終わったら現場の間を空けず、連続して『破』を作業に入る予定でしたから。しかし、それはかないませんでしたね。公開後に、二本目の内容はゼロスタートで見直そうと決めてしまったので。

—それは、『序』で観客の反応がすごく良かったということが大きな理由ですか。

庵野 ええ。まずは新宿ミラノ座での「予告」の反応を聞いてからですね。劇場映画ですが、シリーズと同じフォーマットにしたかったので、「予告」は企画当初から入れるつもりでした。いつもの曲だし、サービスとして旧作からのお客さんも喜んでくれるだろうと。しかし、あそこまで反響が大きいとは予想外でした。本来、二本目まで間が空くし、その緩和のためにも最後に「予告」をつけることで期待値を盛り上げ、お客さんの中にはここがピークになる人もいるだろうとある程度は予測もしていましたが、思っていた以上でしたね。特に新キャラです、予想外に反応が大きかったのは。

—私の行った劇場でも、最後の最後でもものすごく盛り上がってました。

庵野 そうなんです。あそこまで期待されるとは、思っていませんでした。観に行っていたスタッフも感動して、興奮してましたね。

最初に考えていたプロットでは、新キャラが大きく活躍するのは三本目からだったんです。二本目は顔見せ的な、ちょっとした出番でしか考えていませんでした。旧作から出ているので、あまり新キャラというイメージはないんですが、実はアスカも『新劇場版』では二本目から出てくる重要な新キャラなんです。なので、どうしてもアスカにウエイトがかかるだろうから、二本目ではまだ新キャラはそんなに重く扱う気はなかったんです。しかし、観客の新キャラに対するあれだけの期待には、もう応えるしかないだろうと、出番を増やす方向に路線変更となりました。まずそこから二本目の見直し作業を始めた感じです。『破』に関する意識が大きく変わったのは「予告」の反応の大きさ、お客さんの熱量によってですね。そこに僕の心が動かされ、作品の舵が大きく動き出したんです。

—実際の作業はどう変わっていったのでしょうか。

庵野 中身、つまり脚本もありますが、まずは作り方、作業方式の見直しからですね。

一本目 『序』のときは中途半端にTV版の再現にこだわっていた気がするんです。とにかくお金もないし人手もないし時間もかけられないので、過去の素材をうまく組み直そうと。再現することに細かくこだわり過ぎて、タイムシートのタイミングもそのまま変えずに作っていました。で、『序』の途中で「別に、シート変えてもいいじゃん」と気づいたんですよ。妙な感じかもしれませんが、なんだか「デジタル撮影の新作」なのに「フィルムの再編集」という一等最初の「言葉」にとらわれ過ぎていたんです。『序』の初号試写のときに「ここまで全面的に画を直すんだったら、もっと画コンテから描き換えても良かったんじゃないか」とも感じました。基本コンセプトとしてあえて旧作と同じところから始める、というのがあったですが、逆にそこにこだわりすぎた感じもありました。なので、二本目からはもう旧作へのこだわり的なものは捨てて、全部新作の気持ちで作ろうと。ゼロからの出発です。

まずは、当然ながら脚本から直していこうと思いました。脚本もその段階ではまだまだ旧作に沿った展開をしていたり、原画流用などを念頭に置いたものだったので、そこから変えていこうと。プロット、箱書を一度まっさらの状態に戻したところでゼロから見直したです。そこで全体的ストーリの流れ、ドラマの検証と、マリという新キャラ確立のために、監督陣と鶴巻の声がけで改めて参加してくれた榎戸(洋司)さんとで箱書の検討を主とした合宿をしました。男ばっかり、熱海で二泊三日のカンヅメ状態です。そのときに摩砂雪から「タイトル明けは墓参りから始めたい」とか、榎戸さんから「シンジとマリがラブラブになる」などの斬新なアイデアやプロットの大幅な修正案も出てきて。それからですね、大幅な見直し作業が本格始動したのは。

—アバンでマリが出てくること自体は変わっていませんか。

庵野 そうですね。「マリや仮設5号機、第3の使徒など、これまで見たことがないキャラやメカ、箱根ではないベタニアベースという新たな舞台をド頭から出す」という内容は、箱書の第一稿から変わりませんでした。戦闘の段取りやマリのセイフ、性格などは変化していますが、アバンの物語の流れそのものは変わってないです。旧作からの客さんにも、初めて『破』から入る一見さんにも、インパクトを味わってほしかったので。旧作を知っている人には知らないこと尽くしで唐突ながらも、加持という人物で共通項を得ていると、とりあえずは安心してもらえるかなと。セリフが日本語字幕で英語とロシア語スタートというもそうです。まずはこれまでと違う印象から映画を始めたかったんです。

—仮設5号機も見慣れた二足歩行型のEVAではありませんでした。

庵野 そうですね。すぐに区別できる形状の見慣れないEVAを登場させたいというのと、アバンはEVAも使徒もフルCGにした画面づくりをやってみたかったんです。フルCGでの戦闘自体が『エヴァ』では見慣れない映像でアバン向けだし、フルCGでどこまでEVAの戦闘ができるのか、技術的なところや制作上の段取りなども含めて試せればいいか、という実験的意図もあります。複雑な形状、ディテールや、四脚など手描きでは大変な手間暇がかかり、なかなか描きづらいデザインにして、走行や動きもCGでなければ効率良く描けない戦闘場面というものを、この機会に試してみたかったんです。使徒もCG前提の複雑なデザインにまとめました。背動(背景動画)という、これまたCG向きな演出の画づくりも含めてですね。あと、アバンだと作品の冒頭なので制作スケジュールも十分あるだろうと。だったら、フルCGの戦闘場面をアニマティクスとか使って、いろいろと問題点があっても検討、検証時間があるんじゃないかという目論みもありました。

でもこれは結局、諸々で時間がなくなって、アニマティクスもうまく作用したカットがありますが、総括するとあまり思惑どうりとはいかず、ちと残念でした。手描きのエフェクトを追加したり、CGの爆発を取り入れたり、撮影処理も含め時間がいっぱいぎりぎりまであれこれ試行錯誤し続けた結果、画面としてのでき上がりにはその甲斐があったと思いますが。

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